本作は、偶然発見されたライブ録音のカセットテープより制作された。
演奏は1979年6月24日の昼間、当時PIT INNと並び新宿の二大ジャズクラブのひとつであった歌舞伎町のタローで行われたもので、その模様を録音したカセットテープは、高柳の死後、遺品の中から見つけられた。
高柳昌行は70年代、ニュー・ディレクション・ユニットなどのフリージャズ演奏と並行して、リー・コニッツやレニー・トリスターノなどを手本にしたクール・ジャズが基調の数々のスタンダード4ビートジャズ、そしてブルース、サンバ、ボサノバなどの演奏を、自らの“セカンド・コンセプト”と位置づけて繰り広げているが、本作に収めた演奏もそうした活動の中の一幕である(ちなみにグループとしてのセカンド・コンセプトのベースは本来井野信義だが、井野が多忙な時期のリハーサルに本作でベースを弾いている森泰人がしばしば参加していたとのこと)。
本作に収められた曲は、『タイム オン マイ ハンド』はビリー・ホリデイの名唱でも知られ、『ユービー ソー ナイス トゥ カム ホーム トゥ』は日本ではヘレン・メリルの歌唱でつとに知られるコール・ポーターの名曲、『サブコンシャル リー』もリー・コニッツのデビュー作(1950年)に当たる楽曲と、いずれも“古き佳き時代”に作られ演奏されてきたものだが、高柳のギターのずっしりとした音色と力強いピッキング、そして当時のジャズの空気を偲ばせるリズムによって、新しい命を吹き込まれている。
このグループは、弘勢憲二のピアノと森泰人のベースと山崎泰弘のドラムでスタンダードの曲を演り、その上でバリバリとアドリブを弾きまくりたい、という高柳の発想で結成されたとのことだが、高柳のギターを支える他のメンバーの演奏も含め、70年代から80年代に差し掛かる時代の“日本のジャズの最高峰”の一例を、ぜひ味わっていただきたい。 |