日本の独特な音楽を作ってきた十三絃箏と、新しいと同時に先祖返りの楽器でもある二十五絃箏には、アジアから中東まで幅広い地域の悠久の時の流れが沁みこむ。これらの楽器と西洋の鍵盤楽器との出会いによって、時に古典的な音楽作品が聴きなれない新しい響きを聴かせ、時に新しい音楽の中に懐かし…
神話、伝説、歴史の断片が折り重ながら、弦楽四重奏やエレクトロニクス、邦楽器、伝統楽器によるアンサンブルが絡み合う。ロシアの聖なる湖底都市伝説。旧ソ連の中央アジアやサハリンのコリアンディアスポラも出自をもつ現代詩人が描く伝統的な韓国やロシアの神話の世界。20世紀の…
中央アジア、ロシアに暮らした高麗人(コリョサラム)の来歴を背景にした物語は、中世より説教節や浄瑠璃を通して語り継がれた「安寿と厨子王」と韓国のパンソリ「沈清歌」を接続させながら展開。民衆に愛された古い物語の登場人物が若き歌い手の静けき声の中に蘇る。その中に古い葬列歌や子守唄、パンソ…
青木菜穂子、4作目のアルバム。リーダーバンドを含めると8作目となる。ピアノ独奏を中心に、オリジナル曲とアルゼンチン系の楽曲でアルバムを構成。日本でクラシックとジャズを、アルゼンチンでタンゴとモダン・フォルクローレを吸収してきた青木が、それらすべてを作編曲と演奏表現に還元している。注目は青木…
現代音楽方面の作曲家であり、ピアニストとしてはクラシックから即興演奏まで幅広く手掛ける高橋悠治だが、本作は即興演奏に徹したプレイを聴かせる。パートナーを務めるのはパーカッショニストのロジャー・ターナーで、70年代から英即興音楽シーンで活躍してきた筋金入りのインプロヴァイザー。そのスタイルは…
本作は1968年に結成されたコンテンポラリー・ジャズ・グループ、高柳昌行ジャズ・コンテンポラリー4の、1969年2月のライブ録音である。1969年といえば、5月には富樫雅彦と組んだグループで録音した『WE NOW CREATE』(富樫雅彦カルテット名義)にて公には初めてフリー・ジャズに取り組み、8月には自身のフ…
フランスのレーベルAn'archives より発表された、望月治孝 (alto sax) と川島誠 (alto sax) のスプリットLP。いずれも、2017年のライブ録音。双方に共通する特徴は、歌であり、私的なフォークロアであると感じた。フォークロアと言っても音楽スタイルという意味ではなく、個人的な心象をダイレクトに表象しているとい…
現代音楽やジャズを背景に勃興したイギリスのフリー・インプロヴィゼーションは、デレク・ベイリーやエヴァン・パーカーらを軸に発展していった。前者がよりイデオロギーを軸としたのに対し、パーカーは次第にジャズ的な演奏表現重視の即興へとシフトしていった。本作は、高い評価を受けてヨーロッパ各地で活動…
近代クラシック/現代音楽の色濃く反映させるピアノと、芸術音楽の領域で響かせようとするパーカッションが、それぞれの音楽的背景を見事に語彙として使いこなし、即興という手法で繊細かつ極めて強度ある演奏表現に昇華させている。それは現代の芸術音楽が正対すべき局面に向き合う事の出来た、芸術…
長きにわたって東京のフリージャズのメッカのひとつである高円寺グッドマンへのレギュラー出演を続けているこのデュオ、フリーフォーム特有の圧力と速度感を保ちながら、「砂山」」「You don't know what love is」などの古い歌音楽のメロディを織り交ぜ、独特の詩情をたたえる音を奏で…
物理学、心理学、認知科学、文化人類学、音楽学、音楽理論…あらゆる知の領域を越境し、音楽の淵源にせまる。「音はなぜ音楽になるのか。これは音楽をする者すべてが読むべき書だ」本多俊之(サックス奏者、作曲家) 「演奏と作曲にかんする具体的な示唆やアイディアに富むこの一冊を、多くの音楽家に強く推薦したい」喜多直毅(ヴァイオリン奏者)「音楽の普遍に挑んだ冒険の書」小鍛冶邦隆(作曲家、東京藝術大学教授)…
アルトサックス奏者・望月治孝による2016年発表作。同年、静岡江崎ホールを借り切っての録音で、アルトサックス独奏。形を成すか成さぬかの境にあるフラグメンツとそのヴァリエーションは、ブレスの背後に隠され、戻るたびにフラジオが交ざり、ようやく形が見えたところでメロディに繋がる。謡いに入った息と…
このコンサートは齋藤の還暦を祝ったものであり、これまでの齋藤の活動を俯瞰したプログラムが組まれた。齋藤が音楽監督を務めたこれまでの舞台作品やインプロヴィゼーションのほか、チャールズ・ミンガスの重要レパートリー、ボッサ以前の独特な文化様相を表象したブラジル音楽、齋藤に大きな影響を与…
狩俣は、59年生まれのフルート、ソプラノ・サックス、ヴォイス奏者。ベルモント大学で現代音楽を中心に作曲と音楽理論を専攻後、新宿ピットインでの演奏を皮切りに、フリーフォームの即興演奏を中心に日本での演奏活動をしてきた。年に100本を超えるライブに参加する、東京のアンダーグラウンド音楽シーンを支…
トランペットとチューバの金管セクション、ピアノとドラムがジャズベース、ここにバンスリやタンブーラというインド楽器、これに日本語と英語を往復する朗読や能管などが重なる。全曲にスミス作のクレジットが入るほどの構成力あるデザイン…