ニュー・ディレクション・ユニットによるフリージャズの方法をより追求し、それがアクション・ダイレクトへと実を結ぶ過程の、貴重なライブ録音盤。
エレクトリックギターを速度可変モーター仕掛けの金属軸などで鳴らしつつ、自分もギターを演奏し(様々なオブジェや弓も使用)、さらに録音テープに仕込んだ音もミックスしながら、リングモジュレーターやワウペダルなどのエフェクターを通して音響の渦を増幅していくというアプローチは、明大前・キッド・アイラック・ホールでの最後の『アナザー・シチューション』コンサート(1984年11月16日)にて、ニュー・ディレクション・ユニットのライブとしてお披露目されているが、直後の北海道ツアーに於いて、その方法を以て高柳がソロ演奏に挑んだ最初の記録である。
その後、翌1985年が明けてすぐより西荻窪・アケタの店にてソロ・インプロヴィゼイションの追求に取り組み、その年の10月5日には『ACTION DIRECT』と銘打ったライブを行い、その模様を収めたレコードも発表しているわけだから、まさにアクション・ダイレクト創造前夜の貴重な一瞬に触れられる一枚と言えよう。むろん、“創造前夜”といえども、高柳のどんなスタイルの演奏にも通底する、聴く者の耳と心を揺さぶる変幻自在の音塊の渦巻く様は、存分に堪能できる。
付属の20ページのブックレットには、この北海道ツアーをプロデュースした副島輝人と、ツアーにローディーとして随行した大友良英の解説を掲載。この貴重な一瞬を知る者たちの証言を読むことができるのも、本作を手にすべき所以のひとつである。 |