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ヴァイオリンとガットギターという編成でのインプロヴィゼーション。それぞれがメジャーな楽器だが、ノンイディオマティックなフリーインプロヴィゼーションの文脈でのこの編成は珍しい。また、演奏に対する方位の徹底度が素晴らしい。 しかし、ロジャーターナーの演奏楽器の「フラメンコ・ギター」というクレジットや、アダムボーマンの「ヴァイオリン」というそれから、楽器演奏上の伝統的な技術体系を期待しない方が良い。恐らく、ターナーの「フラメンコ・ギター」というクレジットは、純粋に楽器の種類を示しているだけである。弦を掻きむしる音、プリペアドされた楽器などから放たれる音は、西洋音楽従来の楽音上に展開される音響構造を示す事はないが、しかしそれぞれの音群が他の音群との関係上で構造を築いている。しかし、この構造には、意識的に作られてはいないと思える瞬間がある（無意識的にせよ、変化を希求してその構造が現出したと思える瞬間はある）。こういった時に、音が何を根拠に放たれたのかを考えると、音響自体の強靱さ、あるいは行為としての意味性など、調音楽的伝統の上にあるフォルムの構造性以外にそれがあるだろう。この事が意味するものは、作曲と演奏、調組織上の構造、個人の日常に対比された音楽の非日常という位置、などの音楽の位置に関するひとつの在り方を無効にするものである。それは、様々な音楽の意味性が変化していく上で、創造される音楽の側から次の採択可能な可能性を示した重要な行為であり、次の音楽に重要な可能性を開いたものであると思う。（近藤秀秋）