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スペイン政府の奨学生として現地に赴いて修行を重ね、”ロドリーゴ賞”も獲得したギターの逸材の処女作。彼女が得意とする、デ・ラ・マーサからT.マルコまで、スペインの作曲家の作品がズラリだ。どの曲でも、彼女はその曲が内包する精神性に迫りながらそれを彼女の内面の”声”として表現している。だからだろう。高い技巧を要する演奏でも、それがテクニカルに感じることはない。彼女の誠実なアプローチ、そのみずみずしい感性によって綴られる音からは、かの地の風土に培われた精神の香り、深い情感が伝わってくる。（上村敏晃、「ＣＤジャーナル」2004.11月号　注目盤） 　坪川は12歳からギターを始めたが大学は東京外語大のスペイン語学科を卒業、その後スペインに渡りマドリード王立音楽院を卒業したという経歴の持ち主。録音を聴くと、ジャケ写の印象とは一見正反対の、情熱的で芯の強い音楽が展開されていく。まさにスペイン音楽の神髄を聴く思いだ。これは彼女の素晴しい音楽性とともに、使用しているアントニオ・マリン=モンテロのギターにも関係しているかも知れない。マリンはグラナダ、アルハンブラ宮殿近くに工房を構える製作者で、マドリード系とはまた違う個性ある楽器を製作している。その乾いた、強靱で重みのある独特の音色で弾かれる、たとえばスペイン楽壇の大御所だったR.S.デ・ラ・マーサのアンダルシア風の曲などには、大変感銘を受ける。その他19世紀の曲も現代の曲もみな味があり、ロドリーゴ「小麦畑で」も絶品。魅力的なアルバムだ。（倉林靖、「音楽現代」2004.11月号　推薦盤）