住友郁治 / Oratio～３つの作曲家の祈り～
[EXAC006-007]

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日本のリスト弾きとして、あるいはベヒシュタインのスペシャリストとして知られる住友郁治（すみともふみはる）、2007年リサイタルの完全ドキュメント。 本作は2007年４月28日に行われたピアノリサイタルの余すところなく収録したライブ作品で、住友のCDデビュー作。ベヒシュタインの演奏に繊細忠実な特性を使っての演奏は、現代ピアノの豪勢なサウンドに頼っての勢いに委せた演奏ではなく、全ての声部を明確に活かし、ハーモニーの序列を的確に捉え、音色の操作は超絶の域と言っても良いほどの見事な制御を見せる。特に「巡礼の年報　第２年」は、楽器と一体化したかの如き高みに達しての演奏で、楽曲の全体構造のから瞬間の細部の表現までを凄まじい精度でコントロールし切ったほとんど隙のない見事な演奏。 ★音楽誌レヴュー★ 『Oratio』とは”祈り”。住友はこのリサイタルに際し、そうしたテーマに基づき３人の作曲家の作品を並べた。それはモーツアルト、ベートーヴェン、リスト。ことにリストの「巡礼の年」が選ばれていることは、それをかなり直裁に反映したものだろう。さて、ここで聴かせる住友の演奏には並々ならぬものがある。それを”鉄壁のコントロール”と呼んでもいいかもしれない。恣意的なもの偶発的なものをを許さず、強い意志と集中力で堅固極まる演奏を聴かせる。なるほど、これぞ信仰と”祈り”の姿勢である。　（石原立教、「CDジャーナル」2007.12号、今月の注目盤 　住友郁治は、少なくとも一部ですでに定評を持つピアニストの一人。1991年NHK-FM放送にデビューしたとのことだから10数年あるいはそれ以上のキャリアを踏んできている。CDを発表するのはこれが初めてだが、それは２枚組、曲目も正統的なレパートリーを揃えて、なかなか堂々としたデビューとなった。　（濱田滋郎、「レコード芸術」2007.12号　特選） 　住友郁治による東京文化会館でのライブ録音（2007年4月28日）で、モーツァルトの《ソナタ》ヘ長調K332、ベートーヴェンの《熱情》、リストの巡礼の年第２年《イタリア》」で構成されている。「オラーツィオ（祈り）」と題された２枚組のアルバムだが、選曲からはとくに「祈り」という言葉は連想されない。それについて住友は、今回取りあげた作品には、「私たち人間の当たり前の欲が、祈りという形に姿を変え、神的に変容したとき、救いへと変化する姿を具現化している気がする…」と少々哲学的、倫理的、宗教的な考えを披露している。（中略）聴き所はリストの《巡礼の年》の第２年。静寂から強大さまでデュナーミクや情感の振幅が素晴らしく、同時に落ち着いた内省的な深みを感じさせる。先の「祈り」についての見解はまさにこのリストに最も強い説得力をもっている。一つ一つの音や響きを吟味し、心で受け止めているような丁寧な扱いや、一瞬に時を凝縮させるような感覚もいい。思索と力とスケール、ヴィルトゥオジティ。リストを得意としているというが、それも頷けよう。思い切りの良い表現やダイナミズム、自然な音楽の流れや内面の深度はライヴならでは。　（那須田務、「レコード芸術」2007.12号　準特選盤）