住友郁治 / Oratio 2 -recital 2014-
[EXAC013]
販売価格: 2,160 円 (税込)
希望小売価格: 2,000円+税
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ピアニスト住友郁治、4枚目のアルバム。モーツァルト、ショパン、リストという得意レパートリーに加え、ラフマニノフを取りあげて大きな反響を呼んだ、2014年リサイタルのライブ録音。 選択されたプログラム以上に、ピアニストの表現はロマン派的な人間的情感に溢れる。公演当時、住友は大きく体調を崩し入院、演奏中も次第に記憶が薄れて行った。この為か、演奏は次第に構造や解釈よりもピアニストの感じた事が先行して音に反映されたかのような様相を示しはじめる。特に意識が朦朧として行ったというラフマニノフ以降の演奏は、異様なタイム感とダイナミクス表現を示し始め、それはリストによる2つの伝説「水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ」で大きなクライマックスに達し、打ち震え叩きつけるような表現で万雷の拍手を浴びた。衒学的な理解を超えたところに音楽を成立させた、ひとりの演奏家が達したひとつの到達点の記録となった。 2014年10月1日、横浜みなとみらいホール、実況録音盤。
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「自ら曲それぞれの感動を味わい、聴き手にもそれを伝える」といった姿勢をもって弾かれており、成功している。十分に情感を込めた弾きぶりだが、押しつけがましさはないのが良い。(中略)リストは両聖フランチェスコにちなむ≪2つの伝説≫と、ソナタ風幻想曲<ダンテを読んで>。これらも物語とそれに伴う情景を目のあたりに浮かばせる達演だと評せよう。これら難曲に類するものでも、ライブ録音でほころびや乱れを感じさせない住友郁治の能力と持久力の高さはなかなかのものである。(濱田滋郎、「レコード芸術」2015.12号)
(異才・住友郁治の美の本質に肉迫するドキュメント) 「知る人ぞ知るピアニスト」住友郁治による2014年のソロ・リサイタルのライヴ録音。聞くところによれば、この日の住友は過度の心労により劣悪な身体コ ンディションであったという。今回の録音は、そうした極限状態の裏返しであろう、極度の集中力と研ぎ澄まされた感性が、幽玄ともいえる境地を創りだしてい る。「無心」を超えた、その先にある演奏は、タイトルである“Oratio” (祈り) を連想させる。一見静謐さをまといながらも、音に潜む信念がすさまじい。聴き手は派手な衝撃こそ受けないものの、じわじわと浸食されていくスリルに気がつ けば囚われている。
モーツァルト、ショパンへと弾き進むなかで、硬質な音色が徐々に華やかに開花してゆくさまには、いかなるコンディションでも容易には乱れをみせないヴェテラン・ピアニストの筋のよいリリシズムが見てとれる。生来のセンスというべきものだ。あたかも季節の推移をみるかのような自在で自然な空気感がある。とり わけ単音の高貴さは格別であり、ピアニスティックな効果にみちたラフマニノフやリストのパッセージの数々は珠玉と呼ぶにふさわしい。
やはり住友郁治といえばリストであろう。3年前に聴いたリサイタルでも感銘を受けた「二つの伝説」であるが、さらに凄みを増したようだ。作曲家がつけた標 題がいかにも正確に表現されているような優等生臭さはみじんもなく、まさに言葉いらず。音がすべてにリードする。音がそれ自身の生を生き、清濁併せ呑むド ラマとして仕上がっている。住友郁治というピアニストが際立った個性を放つのは、このドラマ性の豊かさ所以である。ピアノという楽器にこだわり抜きつつ も、クラシック音楽という枠組みを超越した説得力で聴き手に迫る。思えばその美の本質がデモーニッシュなものと表裏一体のリストほど、住友にふさわしい作曲家はいまい。その事実を確信する1枚である。奏者の繊細な心の襞に寄り添うような研ぎ澄まされた録音技術もすばらしい。(伏谷佳代、「JazzTokyo」2015年)
ショパンの≪バラード≫の第3番は内声を含めた声部の弾き分けが巧みでバランスも良好。アーティキュレーションや歌い回しに独自性、堅牢な構成感と輝かしく男性的な力強いタッチが聴かれる。≪スケルツォ≫第3番も同様で主題のオクターヴも危なげない。中間部では重厚な和音と軽やかで繊細なヴェールのようなパッセージがはっきりと対比される。(中略)前作でもリストが良かったが、今回も聴きどころだ。≪2つの伝説≫は<小鳥に説教する…>の爪弾きや<水の上を歩く…>の厳かな出だしとその後の力強い音楽の推進力が、そして<ダンテを読んで>は巧みな劇的構成が素晴らしい。(那須田務、「レコード芸術」2015.12号)
住友が得意とするショパンやリストにモーツアルト、ラフマニノフを加えた重厚なプログラムのライブ録音。華やかな音色と呼吸の通った歌い回し、自在なルバートによる音楽表現が魅力的。(長井進之助、「CDジャーナル」2015.12号)
ライブとしては高いSN比なのが注目できよう。ステージ上の演奏の姿をリアルに収めつつ、遠さを感じさせない巧みな捉え方が印象深い。かろやかでのびやかなサウンドは特徴的で、無闇にアタックを強調しないピアノが印象的。(神崎一雄、「レコード芸術」録音評、2015.12号) |
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