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ヨーロッパを震撼させたテイラー欧州ツアー中、屈指のテクニシャン二人との演奏。1988年のセシルテイラー欧州ツアーは、欧州即興音楽の名プレイヤー対セシルテイラーという図式をとって開催された。それは、アンサンブルというヨーロッパ的なイデアを完成させつつあった欧州即興演奏シーンを擾乱し、演奏そのものの強度や演奏家個々の音楽の推進力を欧州即興シーンにもたらす結果となった。この欧州ツアー中でも屈指のテクニシャンであったホンジンガー(cello)とエヴァンパーカー(sax)とテイラーとの対峙を記録した本作品は、即興演奏に生まれがちな他者依存的なアンサンブルをテイラーが拒否するところから始まり、次第に全体が演奏行為の凄みそのものへと登り詰めていくという生成のドキュメントとして優れている。 　セシル・テイラーは88年に、ヨーロッパ各地の即興演奏家とのセッションを10枚のCDにまとめたが、これはその中の1枚。パーカーとホンジンガーのやりとりをテイラーはしばらく音を発さずに観察し、やがて二人の親密な関係に微妙な違和を送り込んでくる。定位のせいもあるのだが、中央のパーカーの饒舌な演奏に、右のホンジンガーが調和的に反応し、左のテイラーは斜め方向から絡んでいるように思える。最後の十数分はかなり盛り上がるのだが、リアルタイムの”対話と違和”がどう動いていったか、のドキュメントとして興味深い。　（村井康司、「CDジャーナル」2005.7号　注目盤