コントラバス奏者・吉沢元治は、60年代に北村英治Qなどのジャズ・バンドに参加後、フリージャズに進んだ、シーンの黎明期を支えたタレントである。また、フリーという文脈以外にも、天上桟敷や赤テントといった日本のアンダーグラウンド演劇を支えてきた人物であり、より広くはクラシックやインプロヴィゼーションといった前提からコントラバスのソロという地平を切り開いた人物でもある。
クラシック、ジャズ、即興などのジャンルを越境して成立するコントラバスのソロという世界は、世界的にもB.フィリップス、B.ガイ、J.レアンドルなどの多くの名演奏家によって探求されてきた深遠な表現世界であり、日本では吉沢がその嚆矢となった。本作は、間章のプロデュースによって1975年に発表された、彼のコンバス・ソロの原点である。フラジオやピチカートはもとより、アコースティック楽器個々が持つ様々なサウンドが音楽に組み込まれ、それは演奏の強い表現だけではなく、スコアには収まりきらない音響構造を提示してもいる。また、こうした吉沢の音楽が、以降に続く斎藤徹や河崎純といった、独特の身体性と演奏システムを持つ日本のコントラバス・ソロの脈絡の基点ともなった。1975年7月27/28日、軽井沢高原教会にて録音。 |