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石井眞木の作品集の第２弾として制作された、室内楽作品集。随所に聴かれるミニマルなどの西洋現代音楽的な複雑な手法と、単純化された楽曲様式が同居しているところから作曲家の個性を類推するに、恐らく直感的な動機を優先させた作曲家であったのではないかと思う。それだけに、物理的論理づけではないところに音楽のアイデンティティを求める傾向は強かったようで、石井の場合、それが日本／アジア的といったような文化的符合に対する意識へと繋がっていったように思える。自身によるライナーノーツにある「私の音楽には「西洋音楽」の発展上にある響きの要素と、日本古来の音楽の響きの要素の二つの「極」が在り…」といったような発言、あるいは第３曲「飛天生動２」が敦煌石窟の飛天からイメージの音化の試みである点などは、その一例と言える。こういった西洋主体の音楽に対するアジアの作曲家のアイデンティティの模索そのものが、戦後の日本の現代音楽の特徴のひとつとは云えるだろう。そういった文化的動機を室内楽のような具体的な音響にどのように置換させていったのかというところは、このＣＤが指し示しているひとつの意義だろう。例えば、左手と右手それぞれに速度の異なるリズムを持たせるという所作（*第１曲「ブラック・インテンション３」）、あるいは何処にも行き着かせる事の無い執拗な反復（*第４曲「時の閃き」）などは、音響的成果以外のところに価値を置いていたであろう作曲者の理想の断片を見て取ることが出来る。