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現代音楽、タンゴ、ジャズ、琵琶楽、フラメンコ、現代詩、モダンコンポジション…多様化する芸術音楽をポストモダンの視点からギターの一点に統合する試み。ギタリスト近藤秀秋、セカンドアルバム。
近藤秀秋は、主に前衛/即興音楽シーンで活動するギタリスト。前衛音楽グループEXIAS-Jのほか、豊住芳三郎ユニットのギタリスト、トリスタン・ホンジンガーの来日公演におけるデュオ・パートナーなどを務めてきたが、数年前より音楽書『音楽の原理』の執筆に取り組み、演奏活動を中断していた。本作は、書籍を書き上げて以降初となる録音作で、近藤のソロとしては2枚目。独特の編成と解釈によるベルク「ここに平和が」やオリジナル曲などの20世紀の作曲技法を用いた曲、マイルス・デイヴィス「Blue in Green」やアストル・ピアソラ「Night Club 1970」などの20世紀の在野の地域音楽、萩原朔太郎「漂泊者」を用いた琵琶楽のモダン化など、違うパラダイムの上にある音楽を、ポストモダン的な視点からギター音楽を一点に還元。ギター音楽としても、ジャズ、フラメンコ、クラシック、邦楽などの演奏技巧をひとつの音楽にまとめあげる。ジャンル化したまま方位の確定しない現在の芸術音楽に、進むべき次の方位を見出そうという挑戦。
前衛イメージも強い音楽家だしそういう色が本作に皆無とは言わないが、ポピュラリティのある作曲と演奏にぐいぐい引き込まれていくCDだ。独奏の曲は優美であり、近藤のリーダーバンドのEXIAS-Jで活動を共にしてきた神田晋一郎(p)と河崎純(cb)、さらに中溝俊哉(オーボエ)という参加ミュージシャンの演奏も相まって、緊張感をキープしつつ軽妙な味わいも醸し出している。カヴァーもみな素晴らしく、ピアソラの「Night Club 1960」での瑞々しさ、現代音楽系のアルバン・ベルクの「Hier ist Friede」における戦慄感、マイルス・デイヴィスの「Blue in Green」の艶っぽさで、目が覚める。ヒグチケイコが英訳して静かに朗読する萩原朔太郎の詩「漂泊者」は約13分の長尺の曲ながらだれる事なく琵琶でリードし、伝統芸能とは別次元の現代的な味わい深い鳴りがたまらない。近藤の音はアタック感を含めて響き具合が表現であり、音の振動による空気の震えや弦の動きが見えてくる音質で背筋が伸びる。(行川和彦、「ミュージック・マガジン」2015.9号)
1 .Points (H.Kondo)
2. Repetition (H.Kondo)
3. 漂泊者の歌 (詞:萩原朔太郎/訳:ヒグチケイコ/曲:近藤秀秋)
4. Night Club 190 (Astor Piazzolla)
5. Red (H.Kondo)
6. Rain (H.Kondo)
7. Hier ist Friede (Alban Berg)
8. Blue in Green (Miles Davis)